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東京地方裁判所 平成10年(行ウ)90号 判決

原告 小林昭弘

原告 岩間宏

原告 吉田哲男

原告 吉田亮

原告 荒木照壽

原告 島村誠

原告 高江恒子

右原告ら訴訟代理人弁護士 斉藤驍

朝比奈秀一

松島宇乃

藍谷邦雄

被告 文部大臣 中曽根弘文

右指定代理人 牧野広司

町田雄一

木曽功

岩本健吾

小山内優

飯澤隆夫

永田勝

井上卓己

吉岡努

主文

一  本件訴えをいずれも却下する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求める裁判

一  原告らの請求

被告が、財団法人日本中国教育交流協会(現在の登記簿上の名称「日本中国国際教育交流協会」)に対し、平成一〇年二月二〇日付けでした同協会の寄附行為の変更を認可する旨の処分を取り消す。

二  被告の本案前の答弁

主文同旨

第二事案の概要

本件は、財団法人日本中国教育交流協会(後記の寄附行為変更による変更後の名称は財団法人日本中国国際教育交流協会。以下「本件財団法人」という。)の理事又は評議員の地位にあると主張する原告らが、被告が行った本件財団法人の寄附行為の変更を認可する旨の処分の取消しを求めている事案である。

一  法令の定め等

1  法人は、民法その他の法律の規定によらなければ成立することができない(民法三三条)ところ、祭祀、宗教、慈善、学術、技芸その他公益に関する社団又は財団であって営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て法人とすることができる(同法三四条)。

2  公益財団法人の設立者は、その設立を目的とする寄附行為をもって、目的、名称、事務所、資産に関する規定、理事の任免に関する規定を定めることを要する(民法三九条)。

3  民法上、寄附行為の変更について定めた規定は存しないが、寄附行為自体に寄附行為変更の方法が定められている場合には、これに基づいて寄附行為を変更することが可能であると解されており、その場合、公益社団法人における定款の変更について定めた同法三八条二項が、主務官庁の認可を受けなければその効力を生じないとしていることから、寄附行為の変更についても、主務官庁の認可を受けなければその効力を生じないものと解されている。

ちなみに、文部大臣の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規程(昭和二七年六月一六日文部省令第一四号)九条は、寄附行為の変更認可の申請手続を定めている。

二  前提となる事実(これらの事実は各項末尾掲記の証拠等により認定した。)

1  本件財団法人は、平成四年四月一〇日、被告の認可を受けて公益財団法人の法人格を取得した。

(甲一、同四)

2  本件財団法人の寄附行為(以下「本件寄附行為」という。)三四条には、寄附行為の変更を行うことができる旨の定めがおかれている。

(甲二の一、同二の二)

3  本件財団法人の理事長田中一郎は、平成一〇年二月一三日、被告に対し、本件財団法人の五年の教育交流の実績から、新たに中国以外の各国との教育交流も二一世紀を迎えるに当たって必要である等として、別紙「本件寄附行為変更の内容」記載のとおり、寄附行為一条(名称)、四条(目的)及び五条(事業)に係る本件寄附行為の一部変更認可申請書を提出した。

(甲二の一、同二の二、同七の二、同七の四)

4  被告は、平成一〇年二月二〇日、右申請に係る寄附行為の一部変更を認可した(以下「本件認可処分」という。)。

(甲七の三)

5  原告小林昭弘、同岩間宏及び同吉田哲男は、それぞれ、本件認可処分当時、本件財団法人の理事の地位にあり、原告吉田亮、同荒木照壽、同島村誠及び同高江恒子は本件財団法人の評議員の地位にあった。

なお、原告吉田哲男は、本件認可処分当時、本件財団法人の常務理事の地位にあり、事務局長の地位にあった。

本件財団法人においては、理事長は、その業務を総理し、本件財団法人を代表する(本件寄附行為一九条一号)。常務理事のうち一名が就任する事務局長は、理事長を補佐してその業務を掌理し、理事長に事故のあるときはその職務を代理し、理事長が欠けたときはその職務を行う(同条二号)。また、常務理事のうち二名が就任する事務局次長は、理事長及び事務局長を補佐してその業務を執行し、理事長及び事務局長に事故があるとき又は理事長及び事務局長がともに欠けたときは、理事長があらかじめ定めた順位によりその職務を代理又は代行する(同条三号)。理事は、理事会を組織して、本件法人の運営に関する重要事項を審議決定し、また、理事長の委嘱により業務を分掌する(同条四号)。

また、評議員とは、本件財団法人の寄附行為によって、置かれることとされている機関であり(本件寄附行為二四条)、評議員会を組織して、理事会の諮問に応じ、理事長に対し、必要と認める事項について助言すること、理事会及び評議員会の指示により事業計画を広く推進させること等を任務とするものである(本件寄附行為二五条)。

(甲二の一、同二の二、同四、同七の二、同七の五、同七の六、弁論の全趣旨)

三  当事者双方の主張

(原告らの本案の主張)

1 本件財団法人の理事長田中一郎は、財団の交流対象が中国だけであることに飽き足らず、アメリカ、ヨーロッパ等とも交流ができるものにしたいと考え、このような幅広い事業を展開するために、本件寄附行為を変更して、財団の名称を「財団法人日本中国教育交流協会」から「財団法人日本中国国際教育交流協会」に変更すること等を企図し、平成九年ころ、右の変更につき、本件財団法人の理事及び評議員に提案した。

2 しかし、本件寄附行為三四条によれば、右の寄附行為の変更を行うためには、理事の三分の二以上の同意による議決を経ることが必要であったところ、日本と中国との国際交流に専念すべきであること、中国側の関係団体や関係者の信頼を喪失するのは確実であること等の理由から、右の提案に反対する意見を持つ理事及び評議員の数は原告らを含めて相当数にのぼり、理事の総数の三分の一以上に達していた。

そこで、理事長田中一郎は、文部省の高官等にいわゆる根回しを行うとともに、あたかも理事の三分の二以上が賛成して議決したかのような議事録を偽造して、前記のとおり、本件寄附行為の変更を内容とする本件財団法人の寄附行為の一部変更認可申請書を提出したところ、被告は、平成一〇年二月二〇日、本件認可処分を行ったものである。

3 右のとおり、本件寄附行為の変更には理事の三分の二以上の同意による議決がないうえ、被告に提出された寄附行為の変更に係る書類には、右の決議がなされた事実が表われておらず、外形上も認可の前提となる決議が存在しないのであるから、被告がこれを認可することはできないはずである。

よって、これを認可した被告の本件認可処分は認可権を濫用した違法なものであり、取り消されるべきである。

(被告の本案前の主張)

1(一) 一般に、行政処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができ(行政事件訴訟法九条)、ここにいう「処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解されている。

(二) 右にいう法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であって、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるべきものであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も法律上保護された利益に当たるというべきである。

(三) そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきであるから、公益法人の理事及び評議員が、定款又は寄附行為変更に対する主務官庁の認可の取消しを求める法律上の利益を有するか否かは、右認可手続を定めた民法の趣旨・目的、同法が当該認可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等からして、同法が当該定款又は寄附行為の変更が主務官庁により認可されることにより侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある理事及び評議員の具体的利益を個別に保障する趣旨を含んでいると解されるか否かにより判断すべきである。

2(一) そこで、民法の公益法人に関する規定をみると、同法が、公益法人の設立を主務官庁の許可にかからしめ(同法三四条)、設立後も公益社団法人の定款の変更につき主務官庁の認可を要するとし(同法三八条二項。公益財団法人の寄附行為についても同様であると解されている。)、また、公益法人の業務全般の監督権(同法六七条)、不適正な公益法人に対する設立許可の取消権(同法七一条)等を与えている趣旨は、公益法人の設立の許可については当該事業を所管する行政官庁の判断にゆだね、設立後においても、公益法人の事業運営が公益の範囲を逸脱することのないよう、認可権、監督権等の一定の権能を主務官庁に留保して規制することによって、専ら公益法人の公益性を担保し、事業の適正な実施を通じて公益の実現を図ることにあり、そのため同法は当該許認可等にかかる具体的基準を何ら規定せず、それを主務官庁の広範な裁量にゆだねているものと解される。

また、それ以上に、これらの規定が、かかる一般的公益の保護に加えて、公益法人の理事及び評議員個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むものとは解し得ないし、それをうかがわせるような規定は存しない。

(二) そして、そもそも、公益法人の定款又は寄附行為の変更に対する主務官庁の認可は、申請に係る当該変更の内容が公益に合致する否かを判断し、公益の観点から当該変更の効力を補充して完成せしめる行為にすぎない。

そのため、基本となる当該変更行為が不成立であるとか、無効である場合には、たとえ主務官庁の認可がなされたとしても、これにより当該変更が有効となるものではないから、当該認可の効力として、公益財団法人の理事及び評議員の議決権などの権利利益が侵害されることもあり得ない。

ちなみに、法人の機関等の決議に瑕疵がある場合には、法人の理事及び評議員は当該決議の無効又は不存在確認の訴えを提起して、その是正を求めることが可能である。

(三) したがって、公益財団法人の理事及び評議員には、寄附行為変更に対する主務官庁の認可処分の取消しを求める法律上の利益がないことは明らかである。

3(一) 原告らは、寄附行為の変更、特に目的の変更は、本件財団法人と理事又は評議員との間の委任契約又は準委任契約の内容自体を変更することになり、理事又は評議員の法的地位に重大な影響を与えるものであるから、原告らには本件訴えについての原告適格が認められるべきであると主張するが、本件寄附行為の変更により、本件財団法人の名称が変更されるとともに、本件財団法人の目的及び事業が拡大されることによりその権利能力の範囲が拡大される(民法四三条)という法的効果が生じるものの、本件財団法人からその業務につき委任を受け、その寄附行為に従って活動を行うにすぎない本件財団法人の理事及び評議員については、委任はその性質上委任者の利益を目的とするものであって、寄附行為の変更による委任内容の変動自体は、理事及び評議員の個人の権利利益とかかわりがないことから、直接実体法上何らの権利を侵害され又は義務を課されるものではないというべきである。

(二) また、原告らは、民法四〇条を根拠として、公益財団法人の理事らには、認可処分の取消しを求める原告適格を認めるべきであると主張する。

しかし、同条は、公益財団法人の設立者が「目的」及び「資産」に関する定めはしたものの、その他の事項(公益財団法人の名称、事務所又は理事の任免方法等)を定めずに死亡した場合について、利害関係人の請求により、裁判所が設立者に代わって寄附行為の補足をなし得ることを認め、寄附行為者の目的たる公益財団法人設立を完成せしめることを定めているが、右の規定は、寄附行為者の公益財団法人設立の意図を尊重するための規定であって、利害関係人の個人的利益を保護するためのものではないから、原告らの主張は失当である。

4 なお、仮に公益社団法人の社員については定款変更の認可処分取消しの訴えの原告適格が肯定されるとしても、公益社団法人の社員は社団の存立の基礎をなす構成員であり、自益権及び共益権を有するのに対し、公益財団法人の理事及び評議員は、表決権を有しておらず、寄附行為の変更は、寄附行為変更の方法が定められている場合に、その変更規定の実行として行われ、設立者の変更意思が擬制されるにすぎないのであるから、寄附行為の変更認可処分によって、理事及び評議員自身の権利利益が侵害されたり、何らかの具体的義務を課されるものでもない。

5 以上によれば、公益財団法人における理事及び評議員には、本件認可処分の取消しを求める法律上の利益が存しないというべきである。

6 なお、原告らは、既に、いずれも理事又は評議員を退任し、平成一〇年九月二日には、評議員会において、新たな理事が選任され、同月一四日には、理事会において、新たな評議員が選任されている。

(被告の本案前の主張に対する原告らの反論)

1 公益財団法人の理事及び評議員は、公益財団法人との間に委任契約又は準委任契約が締結されたものとみるべきであるから、右契約に基づく事務執行・代表権限と事務執行義務が生ずるものであり、当該法人との間で一定の法律関係にあることには変わりはなく、寄附行為の変更、特に、目的の変更がされた場合には、右の委任契約又は準委任契約の内容自体が変更され、その行動規範自体が変容を余儀なくされることとなる。

このように、寄附行為の変更は、公益財団法人における理事及び評議員の法的地位に重大な影響を与えるものというべきである。

2 また、公益社団法人の定款変更の認可処分の取消しを求める場合には、公益社団法人の基本事項を定め、その構成員の権利義務に関する事項を規定する定款の変更は当該法人の構成員の地位に直接影響を及ぼすことになるから、処分の直接の名宛人ではない当該法人の構成員についても法律上の利益が認められるものと解されているが、そうであるとすれば、公益財団法人の理事及び評議員についても、寄附行為変更の認可処分の取消しを求める法律上の利益が認められるものと解すべきである。

すなわち、公益社団法人と公益財団法人とでは、実際の運営においてはさしたる違いはなく、特に、本件財団法人は、公益財団法人とはいえ、日中間の教育交流によって、両国の歴史的関係を教育の面からとらえ直そうとする真摯な目的のために集まった人たちにより設立された団体であり、寄附された財産も設立者個人が寄附したものというよりも複数の設立者によって集められた財産であるから、公益社団法人と実体において変わるものではない。そして、公益社団法人の社員の有する自益権は重要なものとはいえず、表決権についても専ら当該法人の目的のためにこれを行使することとされているのであるから、公益社団法人の社員も、自益権及び共益権を有しないものであり、右の点において、公益社団法人の社員と公益財団法人の理事及び評議員の地位が異なるものではない。

3 さらに、民法四〇条は、寄附行為が欠けるときには、裁判所が定めるとし、極めて形成的行為を裁判所に担わしめており、裁判所の後見的機能が期待されていることの証左というべきであるが、寄附行為の変更についても同様に裁判所の後見的機能が期待されているというべきであるから、寄附行為変更の認可処分に対する処分の取消しの訴えは、行政行為の適法性の保障を裁判所に求めるものとして、当然に許容されるというべきである。

そして、その際、同条が利害関係人の請求を認めていることからすれば、理事及び評議員に右処分の取消しを求める原告適格が認められると解すべきである。

4(一) 被告は、公益財団法人の寄附行為の変更決議が無効又は不成立であれば、認可自体の効力が生じないから、認可処分による理事及び評議員の地位の変更は生じないとし、かつ、当該決議の無効又は不存在を確認することにより事実上の不利益を是正することが可能であると主張するが、違法な認可が取り消されれば、違法な状態による不利益は解消されるのであるから、認可を取り消す法律上の利益は存在するというべきである。

また、認可処分の取消しを求める訴えと、決議等の適否を争う訴えは、訴訟物を異にし、その一方が認容されれば、違法な変更による不利益が除去されるという関係にあると解すべきであって、認可処分の取消しによる不利益の救済は可能である。

(二) また、被告は、民法が公益法人の理事又は評議員の個々人の個別的利益まで保護する趣旨ではないと主張するが、同法が認可等にかかる具体的基準を何ら規定せず、包括的な認可・監督の権能を与えていることからすれば、主務官庁に極めて広範囲の後見的機能を与え、広範な裁量を付与しているのであるから、公益財団法人の理事及び評議員の個別的利益を保護しているものというべきである。

5 なお、被告は、原告らは既に理事又は評議員たる地位を失ったものであると主張するが、平成一〇年九月二日の評議員会は、定足数を充たしていなかったものであるから、右の評議員会で行われた理事の選任は無効であり、また、右の評議員会で選任された理事によって開催された同月一四日の理事会における評議員の選任も無効であるから、原告らは理事又は評議員の地位を失っていない。

6 したがって、原告らは、本件認可処分の名宛人ではないけれども、本件寄附行為の変更により、理事又は評議員である原告らと本件財団法人との法律関係には重大な変更が生じるものであるから、原告らは、本件認可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有している。

四  争点

以上によれば、本件の本案前の主張の当否に関する争点は、原告らの原告適格の有無、すなわち、原告らが本件認可処分の取消しを求めるについて法律上の利益を有するか否かの点にある。

第三当裁判所の判断

一1  本件訴えは、本件寄附行為のうち、本件財団法人の名称(一条)、目的(四条)及び行うべき事業の内容(五条)を定める寄附行為の変更の認可申請に対して、被告がした本件認可処分の取消しを求める訴えである。

2  民法には、寄附行為の変更に関する直接の定めは置かれていないけれども、公益社団法人における定款変更について主務官庁の認可を受けなければその効力を生じないとされている(同法三八条二項)のと同様に、公益財団法人の寄附行為の変更についても、主務官庁の認可を受けなければその効力を生じないと解されている。

ところで、民法においては、公益法人の設立は、主務官庁の許可を要するものとされていること(民法三四条)、監事の職務の一つには、公益法人の財産の状況又は理事の業務の執行について不整の廉(職権濫用行為や公益法人の公益目的に反するような行為など)のあることを発見したときには主務官庁に報告することが含まれていること(同法五九条三号)、公益法人の業務は主務官庁の監督に属するとされ、主務官庁は、公益法人に対し、監督上必要な命令をなすことができるとともに、いつでも職権によって公益法人の業務及び財産の状況を検査することができること(同法六七条)、公益法人がその目的以外の事業をなし又は設立の許可を得た条件若しくは主務官庁の監督上の命令に違反しその他公益を害すべき行為をなした場合には、その他の方法により監督の目的を達することができない限り、主務官庁はその許可を取り消すことができること(同法七一条)が、それぞれ定められており、これらの各規定によれば、民法は、公益に関する社団又は財団については法人格を与えて、その達成しようとする公益目的を保護することとするとともに、公益法人を、その設立時のみならず設立後においても主務官庁の監督に服せしめることにより、公益法人の公益性を担保する仕組みをとっているということができる。

したがって、公益財団法人の寄附行為の変更について主務官庁の認可を要するとされる趣旨も、寄附行為の変更によって、公益財団法人の公益性が失われることを防止することにあるものと解され、主務官庁の認可は、申請に係る寄附行為の変更が公益に合致するものであるか否かを判断して、寄附行為変更の効力を完成させるための補充行為にすぎないというべきである。

そして、右の認可を要するとした趣旨、目的及びその手続を検討しても、寄附行為の変更の認可を通して、当該公益財団法人の理事又は評議員の地位にある者の個別的な利益の保護を図る趣旨が含まれているものと解することはできない。

また、理事及び評議員は、いずれも本件財団法人の機関であり、理事は、理事会を組織して、本件法人の運営に関する重要事項を審議決定し、理事長の委嘱により業務を分掌するものであり(本件寄附行為一九条四号)、理事のうち常務理事は、理事長を補佐してその業務を掌理若しくは執行し、又は理事長を代理、代行するものであり(同条一九条二号、三号)、評議員は、評議員会を組織して、本件寄附行為に定める事項を行うほか、理事会の諮問に応じ、理事長に対し、必要と認める事項について助言し、理事会と評議員会の指示により、事業計画を推進させるものである(本件寄附行為二五条一項、二項)が、本件認可処分によっても、これらの地位及び職務内容には何らの変動も生じるものではない。

3  右のとおり、本件認可処分は、本件財団法人の理事又は評議員の地位にある原告らに新たな義務を課したり、その法律上の地位に変動を生じさせたりするものではないのであるから、これによって、原告らの権利又は法律上保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるということはできない。

二  この点について、原告らは、公益財団法人の理事及び評議員は、公益財団法人との間に委任契約又は準委任契約が締結されているとみるべきところ、寄附行為の変更、特に目的の変更は、右の委任契約又は準委任契約の内容自体を変更することになり、理事又は評議員の法的地位に重大な影響を与えるものであるから、理事又は評議員である原告らには、本件認可処分の取消しを求める法律上の利益があると主張するが、本件認可処分によっても、これらの地位及び職務内容には何らの変動も生じないことは前記のとおりであるから、原告らの右主張は採用できない。

三  また、原告らは、民法四〇条が、寄附行為が欠けるときにはこれを裁判所が定めるとして、裁判所に後見的機能を期待していることからすれば、寄附行為の変更についても同様に解すべきであるから、寄附行為変更の認可処分に対する処分の取消しの訴えも、行政行為の適法性の保障を裁判所に求めるものとして、当然に許容されるべきであるとしたうえで、同条が利害関係人の請求を認めていることからすれば、理事及び評議員にも、右処分の取消しを求める原告適格が認められるべきであると主張する。

しかし、同条において利害関係人の関与が認められているのは、公益財団法人の設立者が既に死亡している場合について、同人の公益財団法人設立の意図を尊重して、寄附行為の補完によって公益財団法人の設立を完成させようとするためであって、利害関係人の個別的利益の保護を図るためではないのであるから、右規定を根拠として、理事及び評議員にも、寄附行為変更の認可処分の取消しを求める原告適格が認められるべきであるとする原告らの主張は採用できない。

四  以上のとおり、原告らが現在も本件財団法人の理事又は評議員の地位にあったとしても、原告らは、本件認可処分により同人らの権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者には当たらないから、本件認可処分の取消しを求める原告適格を有していないといわざるを得ない。

五  よって、本件訴えは、その余の点について判断するまでもなく、いずれも不適法であるから、原告らの本件訴えを却下することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 市村陽典 裁判官 阪本勝 裁判官 村松秀樹)

別紙<省略>

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